CRAFTSMAN×CRAFTSMEN Vol.2 前編/津吉 学

Craftsman & Craftsmen

CRAFTSMAN&CRAFTSMEN VOL.2 前編

こだわりと誇りを持ち日々仕事をしている方達と、
STUMPTOWNプロデューサーである菊池氏との対談
職へのこだわりや情熱をお尋ねしながら、ブーツとの関連性を探りつつ
お互いのクラフトマンシップについて語り合う。

CRAFTSMAN vol.2
FDMTLデザイナー/津吉 学
<前編>

今回のゲストは、「ファンダメンタル[FDMTL]」を手掛ける津吉学氏。
生地、縫製、加工、すべての工程を日本で行う程のこだわりを持ち、細部まで気を配り作られているコレクションは日本のみならず、海外からの評価も高い「ファンダメンタル[FDMTL]」“着用する程に愛着が湧く商品”をコンセプトに氏のこだわりや熟練された職人さん達とのコミュニケーションのもと、様々な深い知識や研ぎ澄まされた経験がプロダクトに詰まっている。

生地の様々な表現に長けている氏と、革の様々な表現に長け、今もなお追求しているSTUMPTOWNプロデューサー菊池氏によるスペシャル対談が実現。知り合った経緯はとてもシンプルだった。

菊池:
昔からパッチワークとか生地ものがすごく好きで、JUMBLEを歩いている時にすぐ目に入っていましたね。
津吉:
見つけて頂いてありがとうございます。 僕も継ぎ接ぎされた生地、あえてボロと呼ばせて頂きますが、これみたいなボロの魅力に魅了されっぱなしでした。
菊池:
おー、そのボロすごいそそりますね。どこで購入されたのですか?
津吉:
これは有楽町の骨董市ですね。もう一発でヤられましてすぐ買いました。
菊池:
有楽町でもやっているんですね。僕は府中の骨董市にいきますね。 日本の物やフランスとかヨーロッパの物も多く扱っていますね。
津吉:
有楽町は、和の物が多く揃っているところで外国の方もたくさん来ていますね。 インディゴのボロってよく目にするのですけど、白いもの実際はグレーになってしまうんですけど、白いものは珍しいと思います。 ある程度制約がある中でここまで成り立っているというか表現されている事がたまらないですね。 色々なボロを見る度にインスピレーションが湧いて、ブランドに落とし込んでいきます。 時々、子供用のパンツの生地が縫い付けられているのもありますからね。 背景を探るとキリがないと思いますけど、明治から大正くらいのもので、 その時の時代背景や意思などを感じるのも好きですね。
菊池:
当時インポート物の服が好きで良く着てたのですけど、 なんか物足りなくなってきて自然とパッチワークのものを探すようになっていきました。 今でも見つけては購入して、テーブルに敷いたりして生活の中に取り入れています。 そのベースがある中で目に飛び込んできたのがFDMTLのプロダクトでした。 すぐ声を掛けて、プロジェクトを進行しましたね。
津吉:
そうですね。お声がけ頂いて、翌週お話をさせて頂いた時にはある程度形が見えていましたよね? そのスピード感というか共有感がとても嬉しかったです。
菊池:
そうですね。本当に早かったですよね。でもその時僕はすでに見えていましたけどね。笑
津吉:
さすがです。笑 菊池さんが思うパッチワークとか継ぎ接ぎの魅力ってなんだと思いますか?
菊池:
何でしょうね。もちろんデザインされている物が良いのは当たり前ですけど、何とか使用し続けようという気持ちとか、 愛着感とか、何となく見えてくる継ぎ接ぎの中のストーリー感が僕は好きですね。
津吉:
たしかに!どこから出て来たのだろうとか、なんでここにこの布を貼ったのだろうとか、 この布は何に使っていたのだろうとか、1枚のボロからたくさん楽しめますね。 裏も違うのもあって、1枚で2度楽しめる感じも好きです。
菊池:
ですよね。やっぱり格好良く見えちゃいますよね。ラルフローレンのマドラスチェックとかクレイジーパターンとか、 当時からすぐ手に取っちゃっていましたね。日本だとどの辺りから多く出てくるんですかね?
津吉:
青森とかは有名ですよね。それこそ蔵とかから出てくるみたいですよ。 風呂敷とか刺し子とか、蔵を持っているくらいの家なので中には屋号が入っているのも多いですね。
菊池:
屋号入りはたまらないですね。僕は最近”家紋”がとても気になっています。 何か形に出来ないか常に探っています。今世界的にも和柄の評価がまた上がってきましたよね。
――
見てきた物や好きな物、多くの共通点が結びつけたこの二方。出会いは必然でそこからのスピード感は当然だと感じた。
――
海外からの評価も高いFDMTLのプロダクト。 進出の経緯についてから、さらに話が広がっていく。
菊池:
海外からも評価が高いじゃないですか。海外進出は難しかったですか?
津吉:
挑戦でしたけど、変な自信はありました。 2012年に海外に持っていって、やはり感じたのはジャパンメイドのリスペクトというか評価の高さです。 日本で作っているデニムという時点で海外のブランドより一段上に見てくれるんですよ。 そこに加えて、ディテールや縫製に自信があったので、そこを評価してくれているんだなと実感しました。 手作業による細かい仕事や繊細さがジャパンメイドの強みですからね。 ホワイツも手作業ですよね?
菊池:
そうですね。実際は手作業のブーツと機械作業のブーツがあるのですが、やっぱり機械に頼っているブーツは味が弱い ですね。もちろんアガリはしっかりアガってくるんですけど、やっぱりね。実際、革も全部が同じ方向に伸びていかないので、熟練された職人の経験と技術で吊り込んでいくと良い表現が出来るんですよね。いい意味でFDMTLも手作り感満載なところが僕のツボでしたね。
津吉:
ありがとうございます。そこが最大のこだわりでもあり強みであると思っています。
菊池:
ところで、ブリーチの達人っているんですか?購入させて頂いたのですが、独特な匂いが残っていて。決して嫌な匂いじゃな いですよ。
津吉:
苦笑。特に達人という人はいないのですけど、恐らくブリーチの種類ですね。 サンプルが出てきて、もう少しこういう感じにとリクエストをするんですけど、それを使うとこの感じは出ないから、 こっちの方が良いって言ってくれるので、職人さんの言う事を聞きます。 そこには僕では分からない世界があるだなと感じます。そして、匂いの元は残留の塩素かと思います。 もちろん付着していることはなく、匂いだけが残っているのだと思います。 僕はその匂いがたまらなく好きです。
菊池:
僕も好きです。って、変な話ですみません。笑 なんかそれもウリにしてしまえばいいのにって思いますけどね。加工臭的な。
津吉:
いいですね。加工臭。ただネーミングがもう少しキャッチーな方が、、
菊池:
んー、、だとすると、、、エイジングアロマはどうですか!?
津吉:
あっそれいいですね! 一同笑。
――
趣味趣向のベースが近しい者同士の会話は止まらない。 加工やプロダクトを施している部分に注目してみると、革ものと生地ものという特性も風合いも経年変化も異なるものを扱っている。お互いの事に興味が深まっていく。
菊池:
デニムを扱ってる人と良く話をさせてもらう機会も多いのですが、皆さんやっぱりパッチワークには興味が大きいですね。 生地ものと革もの。それぞれ違うけど、どう感じます?実際、津吉くんはレザージャケットとかも作ったりしてますよね?
津吉:
その2つに大きく隔たりを感じている訳ではいません。 正直僕が直接糸紡いだり、縫製したり生地を染めていたりする訳ではないので。 ただ、物自体が半端じゃなく好きなんですよ。 ネイビーのレザージャケットを作った時も元々すごく濃くあがってきた革が伸びると鮮やかな色が出てくるじゃないですか。それを形にした物が大好きです。
菊池:
僕もダナーでホーウィンレザーを使ってネイビーの靴を作りました。 伸びているところと伸びきっていないところのツートーン効果がキレイに出せたなと思っています。
津吉:
本当にキレイですね。
菊池:
さらにコードバンでも別注しました。これは片方だけで2枚の革を使用しています。 普通だと、タンの部分やパネル部分はコードバンの革を使わないと思うのですが、 どうせ作るなら全てのパーツをコードバンで作って欲しいと依頼しました。多分作ってしまうのはウチくらいかと思います。 実際¥20万くらいしてしまいますし。
津吉:
これは履いていくとどういう変化をするんですか?
菊池:
黒光りっていうんですかね。汗とか汚れとかが付着するとアタリが出てきて、アメ色になってきます。 コードバンは少し起毛しているので、拭くと光沢感が復活していい風合いになってきますよ。
津吉:
これは本当にヤバい!めちゃくちゃカッコイイです。ホントよく作りましたね。。
菊池:
タンナーに行って、革を買ってきてはそれを持って行ってこういうのを作ってもらうんです。
津吉:
こだわりが詰まっているブーツなのですね。僕も凝った加工とかが好きで生業にさせてもらっていますけど、 菊池さんもこだわりが半端じゃないですね。
――
理解してもらって初めて成り立つものだと思うので、こだわりは難しい。 両者は、そのこだわりをしっかりとお客さんに届け、心を掴んでいる。
次回では、さらにそれぞれの想いやこだわりを深掘りしていきます。

PROFILE

津吉 学 | FDMTL DESIGNER
2005年設立。「着用するほどに愛着の湧く商品」をコンセプトに、風合い豊かな素材を用いて、細部まで気を遣ったコレクションを展開。2009年、東京都目黒区に初の直営店「CATII TOKYO」をオープン。
2015-16年秋冬シーズンよりブランド名を海外での通称「ファンダメンタル(FDMTL)」に改名した。
デニムをメインとした日本のアパレルブランド。
菊池 孝 | STUMPTOWN DIRECTOR
STUMPTOWNのディレクションだけでなく、フットウェアやアパレルのプロデュースも手掛け、イベントの企画立案などにも携わる。
仕事以外の趣味としても家具やオブジェ制作、デザインやペインティングなどにも造詣が深く、その多岐に渡る創作意欲には各業界も注目する。
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