人が本当に何かに惚れ込んだとき、そこには意外と理由なんてなかったりするような気がします。
そこに理屈や理由なんて要らないというか、むしろ自分でも説明できないというか。
でもそれが悔しいから、追随的に理由を探して、理屈で説明してみようとするけど、なんだかしっくりこないみたいな。
そんな経験がある方も少なくないのではないでしょうか…。たぶん…。
さて、先日よりinstagram等で告知させて頂いております、次回の【WHITE’S BOOTS TRUNK SHOW】
毎度期間中は、限定レザーや限定モデルなどご用意させて頂いておりますが、
今回の限定レザーは約二年ぶりとなる、あのHORWEEN SHELL CORDOVANということで、
目を光らせている方も多いかと思います。
かっこいいですよね、コードバン。この輝くような光沢感、ハリのある上品な質感。
まさしくコードバンにこそ、理屈や理論では説明できないかっこよさがあるような気がします。
が、しかし、不躾ながら今回は、そのコードバンの人を惹きつける魅力の真髄を、
理屈や理論から迫っていこうという、そんなブログでございます。
冒頭で共感してくださった方々、申し訳御座いません。
前置きが長くなってしまいましたが、まずはコードバンとはなんぞや、というところを説明していきたいと思います。
コードバンは馬革の一種で、その中でも臀部(おしりの部分)からわずかしか取れない貴重な革です。
このあたりは、ご存知の方も多いかと思います。
我々日本人が「馬」と聞くと、22万人の歓声や激励、時には罵声を浴びながら、
1600mを全力で走り競い合う彼らの姿を想像しますが、コードバンが採取できるのは実は農耕馬のみ。
近年では農業も機械化が進み、そもそもコードバンが採取できる農耕馬の数も減ってきているので、
その希少性は年々上がっているそうです。
その農耕馬の臀部から採取した革のうち、銀面(革の表面)でも床面(革の裏側)でもなく、
その中間に位置するコラーゲンたっぷりの【コードバン層】を、熟練の職人が手作業で削り出した物が、コードバンになります。
そしてこのコードバン、実ははじめから艶があるわけではなく、
元々は表面が起毛していて、スウェードの様な感じになっているんです。
この起毛を寝かせて、繊維をギュッと凝縮させる事で、あの独特な艶感が生れているわけですね。
ちなみに今回のTRUNK SHOWで使用するSHELL CORDOVANのタンナー「HORWEEN」とWHITE’Sには、
昔からのつながりがあるみたいで、コードバンの中でも特に上質な革を供給してもらっているとか…。
この希少性や、手間隙をかけて作られているという事実だけでも、
コードバンの持つ魅力の裏づけとして、充分なような気もしますが、勿論魅力はそれだけではありません。
かくいう筆者もコードバンの持つ魅力に、魅了されたうちの一人ですので、
ここからは自身の所有するHORWEEN SHELL CORDOVANを使用したブーツを、実際に履いてきた感想も交えながら、
そのスペック面、ビジュアル面の魅力をお伝えしていきたいと思います。
まずはその上品な艶感。
コードバンと聞くと、ギラギラした少しトゲのある艶感をイメージされる方もいるかもしれません。
ですが、HORWEEN社のシェルコードバンの場合は、他社タンナーのコードバンに比べ、
油分が豊富に含まれているので、ギラギラした派手な艶感という印象はほとんどありません。
どちらかというと、少ししっとりとした上品な艶感です。それでいて最高の輝きを放ちます。
こちらは筆者が普段愛用しているシェルコードバンを使用したモデル。
今回はコードバンのブログですので、ブーツがWHITE’Sでないことには、目をつむって頂いた上で…
履き込み、磨くごとに艶感は増し、履きはじめよりも光沢が出てきました。
オイルが豊富に含まれているということもあって、細かな割れるようなシワ感はほとんどなく、
大きくふっくらとしたシワが出てくることも、シェルコードバンの特徴かと思います。
個人的には過去に履いたどの革のブーツよりも、シワの入り方に味のある印象です。
そしてコードバンを語る上でもう一つ欠かせないのが、このピンと張った革の質感。
繊維が密集しているので、極端に柔らかくなりすぎず、凛とした表情が持続します。
その反面、コードバン層という非常に薄い層を削りだしているので、革は非常に薄いです。
ですので、ピンと張りながらも、重苦しいといった雰囲気は無く、コードバンならではの上品な表情になるのです。
さて、そうなってくると、気になるのは履き心地ではないでしょうか。
革がピンと張っている、繊維が密集していると聞くと、
革が固く、あまり馴染まないのでは、と思う方もいるかもしれません。
ですが、こちらも心配御無用。しっかり足に馴染んでくれます。
これも油分が置く含まれている、HORWEEN社のシェルコードバンならではかもしれません。
確かに履き始めは少し固い印象ですが、
着用回数を重ねるごとに窮屈感は和らぎ、屈曲性も出てきます。
しっかり革も伸びてくれるので、サイズを選ぶときは少しきついくらいか、
ピッタリサイズを選んであげると、シワも綺麗に入るのでオススメです。
さて、ここまではコードバンのいいところばかりに焦点を当て、ご紹介してきましたが…
コードバンとは切っても切れないもの、避けては通れないものがあります。
そう、雨ですね。
コードバンといえば雨に弱い。
これはもはや拭えない定説ですが、実際のところはどうなのか。
残念ながら「雨に弱い」というのは事実です。
そもそも先にもお話したように、コードバンは起毛を無理やり寝かせている革なので、
雨にぬれると、寝ていた毛が浮いてきて、斑点の様なシミになってしまいます。
ですが筆者、非常にがさつな性格ゆえ、
はじめは雨の日を避けて、過保護に育てていたコードバンも、
いつしか「小雨程度なら大丈夫だろう」と気にせず履くようになってしまいます。
案の定、雨跡がシミの様な形で靴表面に浮き上がりますが…
「だからこそ気づくことができた」
とでも言っておきましょう。
長い時間雨に打たれていなければ、早急に手入れをしてあげる事で、意外と雨跡はとれるんです。
贅沢にも、コードバンの革サンプルを、雨ざらしにしてみました。
約1分ほどさらしてから、すこし時間を空けて、水滴を拭き取ってみると…
ご覧のように、見るも無残な姿になってしまいました。
大事なのはこのまま放置したり、後回しにしたりせず、すぐにお手入れしてあげる事なんです。
クリーナーで表面をきれいにした後、
雨により毛羽立ってしまった革を、寝かせてあげます。
(コードバンの毛を寝かせる、専用のアビィ レザースティックなるものがあるらしいですが、
節約上手な筆者は、お手製のかなづちの柄を綺麗にやすったもので代用します。)
一度軽くブラッシングしてあげた後に、
コードバン専用のクリームを塗り、仕上げにもう一度ブラシをかけてあげると…
どうでしょう。
斑点の様な雨跡はなくなり、綺麗な表情が復活しました。
しかし、今このブログを読んでいる方の中には、
もうお気づきの方もいるかもしれません…。
そう、面倒くさいのです。
ある程度復活はするものの、手間と時間は掛かります。
結局は革ですから、やはり雨の日は避けてあげるのがベストですね。
「万が一、急な雨に見舞われても、すぐに対処してあげれば大丈夫」程度に捉えて頂ければ幸いでございます…。
なんだか「コードバンの魅力を理屈や理論から迫る」というテーマはどこそこへ…
といった感じですが、最後に筆者オススメのコードバン用お手入れ用品を2つご紹介して、終わりにしたいと思います。
まず一つ目がこちら…
【COLLONIL 1909 SUPREME CREAM DE LUXE】
シダーウッドオイルと、ラノリン等の天然オイルをブレンドしたクリームです。
有機溶剤を使用していないので、幅広い種類の革に使用できます。
こちらは実際、筆者もコードバンをお手入れする際に愛用していますが、とにかく綺麗な艶が出ます。
また、革を適度に柔らかくしてくれるので、ひび割れを防ぎ、足入れしたときのストレスも和らげてくれます。
続いて二つ目がこちら…
【SAPHIR NOIR CORDOVAN CREAM】
フランスのお手入れ用品メーカーとして有名な「SAPHIR」が、
コードバンのために開発した専用のクリームです。
ビーズワックス配合で、こちらも艶が出るのに加えて、
ニュートラル(無色)以外にも、様々なカラーバリエーションがあるので、傷の補色にも使えます。
艶は前者のSUPREME CREAMに比べると、少し控えめです。
さて、なんだかまとまりの無い文章で、筆者の文章力の無さを露呈してしまったような気もしますが…、
いかがでしたでしょうか。
実際コードバンの希少性や、その魅力は、深堀りすればここでは書ききれないほど…。
あーだこーだと文章を並べてみましたが、結局は見た者、手にした者にしか分らない、
五感に訴えかけてくる魅力を持っているのがコードバンなのです。
今までの文章はいったい何だったのか、という結論に落ち着いてしまいました。
なんだか自分でも少し悲しくなってきましたが、コードバンへの興味を少しでも掻き立てることができたなら、幸いでございます。
とにもかくにも、約二年ぶりとなるコードバンのカスタムオーダー受注会
【WHITE’S BOOTS TRUNK SHOW】は8/9(金)から8/25(日)まで17日間の開催です。
みなさまのご参加を、心よりお待ちいたしております。