古きを温ねて(たずねて)新しきを知る~温故知新~

今回ご紹介するのは下の写真の1足だ。
このブーツの機能を持ったスニーカー…
否、このスニーカーの軽さを手に入れたブーツだが、実は今から約30年前に誕生していたらしい。
調べてみるとオリジナルの姿を見ることは叶わなかったが
確かに30数年前のアメリカではこのブーツが誕生するにふさわしいシナリオがあった。

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Danner
JAG
37351
¥15,800+TAX

1970年代後半から1980年代前半、アメリカを発信源として世界的に空前のジョギングブームとなっていたのだが
なんと1984年にこのブームの火付け役である人物がジョギング中に亡くなってしまったそうだ。
そしてこの不幸を境に急激にこのブームは収縮していった。
しかし、健康志向が根付いた人々はその後、心臓に負担の少ないウォーキングブームへとシフトした。
そんななか、既に文化として定着していたハイキングやキャンプなどのアウトドアスポーツ界にも
ジョギングブーム収縮の余波が届いていたのだろう。
1980年代に入るとジョギングブームを糧に技術的にも急成長を遂げた大手スポーツシューズメーカーが次々に参入してきたのだ。
更には、著名登山家がエベレスト登頂の際に某スポーツメーカーのシューズを使用するなど
アウトドア界でもスポーツシューズメーカー製のモノが目立つようになった。
それまでアウトドアブーツの定番であった、ノルウィージャンやグッドイヤーウェルテッド、ステッチダウン製法のブーツよりも
密閉度が高く、ミッドソールにEVAをはさむことで軽量化にも成功し、そして何より安価に生産が可能なセメンテッド製法のブーツが台頭し始めたのだ。
しかし当時のこのアウトドアブーツ界という土俵ではDannerが横綱を張っていたに違いない。
1979年には世界で初めてGORE-TEXを靴に採用するなど革新的な技術と確かな自信がDannerにはあった。
そして群雄割拠の1980年代に入り、Danner社で開発、誕生したのがこのブーツ。
…きっとこんな流れだろう。
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話は少しずれるがブーツ愛好家の間(特に日本)では【古き】が善、【新しき】は悪のような声がしばしば聴こえて来るが
アウトドアブーツは登山者の命を足元から守り、パフォーマンスを向上させる為のギアだ。
アウトドアに用いられるギアは常に最新の技術を駆使し、時には安価に提供できるモノ作りが多くの人々の役に立ち、大きな助けになる。
このモノ作りに対する信念は、妥協や儲け主義とは全くの別物。
実はセメンテッド製法も1950年代には日本に入ってきており、アメリカではそれ以前から採用されてきた。
70年近く靴に使われてきた製法だ。
もはや伝統的な製法と言ってもおかしくない。
軽くて、防水でブーツ顔。
ライトハイクや屋外フェスはもちろんだが、これから梅雨に入る日本ではタウンユースでも活躍することだろう。

ちなみに筆者は6月よりDannerの本拠地、オレゴン州ポートランドに2ヶ月ほど狩り出される為
今年はこの靴で日本の梅雨を楽しもうと決めていたが帰国後の台風シーズンまで持ち越しになってしまった。

7,8月はSPOKANE TODAYhttps://www.stumptownjapan.com/category/spokane/の池岡のように
靴だけではなくライフスタイルも絡めてポートランドの情報も発信していく予定なので宜しくどうぞ。


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